ただの日記(2016.9.18)
めずらしい人から着信があって
わーひさしぶり!どうしたのー?
と電話に出ると
とても悲しいお知らせだった。
わたしが大学時代にバイトしていた
TV局の美術の社員だった上司と
1年前に街でばったり逢ってお茶をした。
数年前に大きな病気をして、
手術をしてからすっかりやせてしまったけど
60を超えてもおしゃれして、天神の画廊を歩き回る
好奇心の塊は、やっぱりかっこいい。
わたしは、彼に生き方を習った。
またみんなで集まって呑みましょうよ!
うん。まだもうしばらくは、オレも死ねんな。
そう笑って別れて
そのあと、用事を思い出してメールを送ったら
退職しても、また呼び出されてるんだって
相変わらず忙しそうに仕事をしていて
もー無理しちゃダメですよ~!
ってあきれて言いながらも、思った。
この人はずっとそうだった。
頼まれたら、断れない人なんだ。
プロデューサーからの無理難題も
収録中に起こるさまざまなハプニングも
限られた時間と予算の中でセットを作るのも
いや~困った困った!
と頭を抱えながらも、結局なんとか形にしてしまうもんだから
また難しいことを頼まれちゃって、走り回る。
魔法使いみたいなオールマイティさと
損得抜きでなんでも引き受けちゃう人の好さが
彼の素晴らしいところだったんだ。
めちゃくちゃ忙しい人なのに
バイトのみんなを可愛がってくれて
わたしは本当に本当にお世話になった。
生きてると、こういうことがある。
また逢おうねって言ったまま
一年や二年なんてあっという間に過ぎてしまい
約束を果たせなかった悔しさが
ざらりとした後味で胸に残る。
もう一緒に呑めないなんて、寂しすぎるけど
思い出すのは、あのくしゃくしゃの笑顔。
彼の怒ったところなんて
見たことがないから
わたしの記憶には、笑顔しかない。
笑い合った思い出が多いほど
お別れするのは、やっぱり寂しい。
こんなことがあると、しみじみ思う。
どこにいて、何をしててもいい。
逢えなくたっていい。
あなたが生きていてくれたら、それだけでうれしい。
だから
元気でいてね。
幸せでいてね。
だいすきな人たちとは
逢いたいときに
いつでも逢えるんだって
子どもみたいに無邪気に
信じさせていてほしい。
そんな存在が、わたしには山ほどいるんだってことを。
雨が、まるでわたしの分まで引き受けてくれたみたいに
大泣きしてる。