013*博多祇園山笠らぶ♡
山笠が終わると、夏が来る。
博多ではそう言われている。
博多祇園山笠は、775年の伝統を誇るお祭りで
毎年、7月1日~7月15日にかけて行われる。
祭りのクライマックスである、7月15日未明から始まる
追い山がすべて走り終わると、ほんとうにエネルギーが変わり
梅雨空がからっと明けて、じりじりと暑い夏がやってくる。
わたしの実家は、祭りの拠点となる博多地区ではないので
子どものころから親しんでいたというわけではない。
大学生のときだったかな。
初めて見た追い山に感動して以来、ほぼ毎年、見に行っている。
夜明け前のぴんと澄んだ空気、観衆が息をのんで見守る中
午前4:59に思いをひとつに謡う「祝いめでた」からの一番山の櫛田入り。
どの瞬間を切り取っても、ほんとうにすがすがしく、美しい。
山笠がすき、というより、愛してる。
と言いたくなるような、血が騒ぐ感覚がたしかにある。
これはきっと、DNAに組み込まれているのであろう
自他ともに認める、お祭り女だ。
山笠は、七つの流(流”ながれ”とは、町の集合体)がそれぞれ1トンを超える山を舁き、5キロのコースを走る時間を競い合う。
京都祇園のように山車を押して歩くのではなく、博多山笠には、台車がついていない。 舁き手と呼ばれる男衆が山を担いで全力疾走するその姿は、ほんとうに勇ましい。
でも、もとはと言えば、タイムレースが目的の祭りではなく
夏の疫病退散の祈祷のため、祇園大神(スサノオノミコト)に山笠を奉納する神事として始まったと言われている。
わたしは、スサノオノミコトとなぜかご縁が深い。
通常は、7月1日から街の18か所を彩る豪華な飾り山笠。
今年は、ライオンズクラブ国際大会で世界じゅうから来福している人々に見てもらおうと、例年よりも1週間早く飾り山が公開されている。
水法被のデザインも、めちゃくちゃかっこいい!
水法被、手拭、腹巻、締込み、地下足袋、舁き縄と、町ごとにユニフォームがある。
誇らしげに法被を着て街を歩く姿は、ほんとうにかっこよくて
どうしてわたしは男に生まれなかったんだろうと真剣に悔やんでいた時期もある。
でも、この勇壮なお祭りを支えているのは、「ごりょんさん」と呼ばれる女衆だ。
山笠にかかりっきりになる「山のぼせ」の男衆は
ごりょんさんがいてくれるからこそ、すべてのエネルギーを山笠に注ぎ込める。
山笠を支えているのは、山を愛するすべての人たちだ。
華やかな表舞台があれば必ず陰があり、その陰仕事に誇りを持つという生き方を
ごりょんさんたちは自分の姿で伝えてくれる。
いい男の陰には、必ずいい女がいる。
これは、まぎれもない真実だ。
九州女の底力の強さを見せてくれるごりょんさんの存在を知るほどに、
わたしは女に生まれてよかったと思えるようになった。
ちなみに、9月に行われる放生会という秋祭りは、山笠を陰で支えてくれた
ごりょんさんたちをねぎらう意味もあると言われている。
祭りは、その地の誇りにつながっていると思う。
自分の生まれ育った土地を誇ることは、自分を誇ることにつながるんだろう。
だから、もしも自分自身を愛したいと思うならば
「自分のルーツ」を愛の目で見てみればいい
と、わたしは思う。
だって、これほど最強な承認はないんだもの!
博多っ子が博多を愛してやまないのは、脈々と息づくこの精神にあるんじゃないかと
わたしはひそかに思っている。