おかあさんの唄をききながら。
音楽が、こころを救ってくれる場面は、ほんとうにあると思う。
音楽はいつだって、そこらじゅうに流れているのだけど
自分がいっぱいいっぱいの時は
とてもじゃないけど、音楽など耳に入らない。
けど、少しでも余裕ができたときに、ふとこころに沁みこむのは
ひとの声だったり、美しい調べだったり、響く音やことばだったりする。
そんなときは、まるで乾いたスポンジが水を吸い込むかのように
ものすごい勢いで、乾いたこころを潤してくれる。
ともすると、ノイズに圧倒されそうな生活の中で
いい音楽には、そんなチカラがあると、わたしは思う。
きのうは、アンサリーのLIVEに行った。
このひとの声もたたずまいも、ほんとうにやさしくて好き。
「旅する音楽」と題して、京都のNabowaというバンドとのコラボ。
バイオリン、ギター、ベース、ドラム&ピアノ編成のこのバンドがまた素敵だった。
実際に2児のおかあさんでもあるアンサリーが
「おかあさんの唄」をうたっている最中
思いがこみあげて、ぐっと詰まった瞬間があった。
「してあげられること もう なにも ないのかしら・・・」
というフレーズをうたう前
のみこんだその「間」に、すべてがこもっていた。
生まれたときから、その子の人生であって
ずっとそばにいてあげられないことは、わかっている。
いつかは、自分の手を離れて歩いていくのだと。
だからこそ、生きている今を大切に。
ともに過ごした、とても数え切れない日々の瞬間。
言葉にはならない、思いがあふれてくる。
あぁ。すべてのおかあさんの思いだなぁと。
ぐっとこらえた思いがこぼれ落ちるように、客席に静かに沁みわたっていった。
二度と再現できない、美しい瞬間に立ち会えるから
わたしはやっぱり、ライブが好きなんだ。
ちょうどその日、セッションで初めてお逢いした方とも
「母として、妻としてよりも、自分の人生を追求する」
というテーマでお話ししていたんだけど。
それでもやっぱり、おかあさんは特別な存在だ。
誰にとっても。
みんなみんな、おかあさんから生まれて
みんなみんな、こどもだったんだもの。
そんな当たり前のことが、しみじみとこころに沁み入った夜だった。
おかあさん、ありがとう。