古い扉をきちんと閉めると、新しい扉がひらく。
「今に生きる」ってのは、意外とむつかしいんだ。
ひとは、ついつい過去や未来に意識がいってしまうから。
7年前にはじめて屋久島に行ったとき
森のガイドさんが教えてくれた。
ほら、今この瞬間だってね。
わたしのこころは7年前を思い出してるわけで(笑)
けど、過去を思い出しながらも、感じてるのは「今」で
この記憶に触れた瞬間、胸にじわっと広がるあたたかさを
たしかに感じているのは、肉体のある「今ここ自分」なんだ。
そのひとは、わたしを精神世界に導いてくれたひとでもある。
もののけの森と呼ばれる白谷雲水峡を
薄暗い早朝からゆっくりと味わう。
まだひと気の少ない美しい森を歩きながら
わたしは、屋久島にくることに決めたいきさつや
まったくの直感でガイドをお願いしたこと
当時つとめていた日本語学校の話
学び始めたばかりの心理学のワークについてなどを
つらつらと話していた。
ガイドさんは、静かにききながら
ほら、そこにヤクシカがいるよとか
苔むした岩から出ている無数の芽をさして
森の歩き方、森の楽しみ方を教えながら
わたしを「今ここ」に引き戻してくれた。
いちばん印象深いのは
ある程度歩いたとき、ガイドさんが言ったこと。
「今から少し時間をとるから、自分の視界に
人の姿が入らないようなところを選んで座ってみて。
そこで、しばらくの間、森と対話するんだよ。
遭難しないように、僕がちゃんと離れたところにいるから。
でも邪魔はしないから、時間になって知らせるまでは
人の目を気にせず、一人で安心して過ごしてほしい。
森の声を聴いて。森を楽しんで!」
その時間が、ほんとうに素晴らしくて!!
20~30分くらいだったろうか?
あっという間のような、ものすごく長い時間がたったような
何もしていないのに、自分の内側がすっきりした
ほんとうに不思議な時間だった。
今ふりかえって思うと、
わたしはあのとき初めて「瞑想」というものを体験したんだ。
当時は、そんな言葉も知らなかったけど。
ガイドさんは、それから何度かその時間をとってくれた。
森と対話するごとに、わたしの意識は深まっていき
今ここにはない、日常のどうでもいいことを口にしなくなっていった。
チベットのシンギングボウルの音を聞かせてもらったり
写真にうつった木霊(こだま)をみせてもらったり
この本は読んだ方がいいよと教えてもらったり
さまざまなメッセージの受け取り方のコツを教えてくれた。
それと同時に、今目の前の足元をしっかり見ることの大切さ
汗をかいて太鼓岩まで登って食べたおにぎりの美味しさ
今ここを感じる大切さを、絶妙なバランスとタイミングで伝えてくれた。
心理学の世界でも、森はこころの象徴とされるんだけど
あのガイドさんは、わたしにわかりやすい形で
森と精神世界の両方をガイダンスしてくれたんだ。
一日じゅう森で遊んで、帰るときにたくさん虹が見えた。
虹は、YESのサインなんだよ。
あなたすごいね。
ずっとこの島に祝福されてるよ!
そう言って、最後にカードを一枚引かせてくれた。
玉依姫さまは、新たなはじまり、精神世界、縁結びを守護する
巫女であり、神さまの依代と言われている。
「古い扉をきちんと閉めると、新しい扉がひらく。」
このタイミングで、なぜかこのフレーズを思い出したのは
あれから7年かけて、開けっ放しにしてた扉をひとつずつ
閉めてきたんだなぁと感じたから。
古い扉をきちんと閉めるという行為は
エネルギーを集約するということでもある。
こころの世界の入口に立っていた7年前に思い描いていたのと
今自分の目の前には、まるで違う景色が広がっている。
あの頃は、ただ不思議でしょうがなかったことたちも
今、わたしの生活にすっかり根づいているという不思議なご縁。
こころの森に分け入って、いろんな自分を発見すること自体が
ただただおもしろく、すっかり魅了されてここまで来たんだけど
それでよかったんだ。
新しい扉は、もうひらいてる。